シロアリは隣の家から飛んでくる?|シロアリ1番!
COLUMN
シロアリコラム
投稿日 2018.08.10 / 更新日 2023.03.02
シロアリ駆除
シロアリは隣の家から飛んでくる?
WRITER
WRITER
木村 健人
しろあり防除施工士
シロアリ・木材腐朽菌に対する木材保存・薬剤性能評価について在学中に研究。2009年新卒でテオリアハウスクリニックに入社。数千件のシロアリ調査・駆除に従事。現在はWEBマーケティングを担当。
「隣家が取り壊されたからシロアリがこっちに来ないか心配」
「隣の家でシロアリ駆除をしたからこっちに来るかも・・」
「隣家で羽アリが大量発生しているから我が家に入ってきてしまう!」
でもそれって本当なのでしょうか。先に答えてしまうと、それはほとんどが迷信です。シロアリは基本的に土の中に生息している昆虫なので、土の中を移動してでしか建物に侵入される心配はありません。
ですから、隣家から飛んで入ってくるというのは間違いなのです。この記事では、隣家からシロアリが飛んで入る可能性が低い理由をお話します。
※本コラムの内容は外来種アメリカカンザイシロアリは対象としておりません。
目次
シロアリの羽アリは家に巣を作らない
シロアリの羽アリを見たことがある人は、「大量の羽アリが飛んで我が家に入ってくるのでは?」と思われるかもしれません。確かに関東エリアで被害の大半を占めるヤマトシロアリは、4月から5月にかけて羽の付いた羽アリを飛ばして活動範囲を広げる習性があります。ですから外で飛び出した羽アリが室内に入ってくることはあるかもしれません。
ですが、羽アリのオスとメスがペアリングして新たな巣をつくる場所が家の中ということは無いのです。なぜかというと、シロアリは湿潤した朽木などの自然環境下で巣を作り始めるからです。日本の在来種であるヤマトシロアリやイエシロアリは、家の木材に直接穴を開けて巣を作るということはありませんのでご安心ください。
雨漏れで腐った住宅木材
ただ、家の木材が腐ってシロアリの居心地が非常に良い、という場合はそこに巣を作られる可能性はあります。ですが、そもそもそんな状態になっていたら既にシロアリ被害を受けている可能性の方が高そうですよね。
ですから、飛んで入ってきたシロアリが家に巣を作ることは「基本的に無い」ということになります。
お隣がシロアリ駆除をしたら家に移動してくる?
隣近所でシロアリ駆除をしたという情報があったとします。そこで駆除されたシロアリが「逃げて我が家に移動してしまうのでは?」と心配される方がいらっしゃいますが、結論から言ってしまうとその可能性は非常に低いです。
理由は、現在使用されるシロアリ駆除剤の特徴から説明ができます。現在の薬剤は、効果が緩やかに出る遅効性成分が使われることが多いです。即効性が無いということは、薬剤に触れたシロアリから他のシロアリに薬剤が伝わっていく(※伝播性という)効果があります。
シロアリはお互いの体を舐め合う習性(グルーミングという習性)があり、薬剤に触れたシロアリを舐めたシロアリに薬剤成分が取り込まれ、ドミノのように効果が連鎖していくのです。薬剤の効果が出る頃には巣の大半に薬剤が行き渡り巣ごと駆除されるので、隣の我が家に逃げて入ってくることは考えにくいのです。
床下から伝って入られる可能性はある
シロアリが飛んで入ってきて家を食べることはありませんし、お隣がシロアリ駆除をして我が家に移動してくることは考えにくいです。しかし、皆さんが気づかぬうちに床下から土中を伝って侵入されることは多々あります。
イエシロアリは行動範囲が広い
弊社の営業範囲である関東地方では、神奈川県の三浦半島や横浜市、千葉県館山市などで生息を確認しているシロアリがイエシロアリです。イエシロアリは温暖な環境を好むシロアリなので関東の沿岸が北限と言われていますが、温暖化の影響で生息域が徐々に北上しています。
そのイエシロアリですが、巨大な巣をつくるシロアリとして有名で、かつ行動範囲の広いシロアリです。どれくらいの範囲で活動するかというと、半径100mほどが活動範囲になります。
イエシロアリの巣
人間の大きさに例えると、歩いて35kmを行ったり来たりを繰り返している様なイメージです。新宿から横浜がちょうど35kmですので、毎日片道35kmを歩いて通勤すると考えたら100mの行動範囲の凄さが分かりますよね。
イエシロアリの巣が半径100m以内にあれば、その周辺の住宅はどれも被害を受ける恐れがあります。土の中から知らぬ間に侵入されてしまうので、飛んで入ってくるよりも恐ろしい侵入経路と言えます。
ヤマトシロアリは活動範囲が狭い
弊社の営業範囲である関東地方全域で生息しているのがヤマトシロアリです。イエシロアリに比べると巣の大きさや行動範囲は小規模です。とはいえ、成熟すると数万頭の大規模な巣を構築することもあります。
しかし、ヤマトシロアリの行動範囲は数メートルの範囲といわれています。というのも、加害箇所が巣を兼ねることがほとんどで、わざわざ遠い巣まで戻る必要がないのです。隣家とものすごく近い狭小地などでは一つの巣で隣同士の2棟を食害している可能性は考えられますが、郊外の住宅地では隣のヤマトシロアリが我が家まで来ることは考えにくいのです。
ヤマトシロアリは遊牧民
ヤマトシロアリは加害箇所の環境が悪くなると、巣ごといなくなってしまいます。まるで遊牧民のように別の餌場を探して移動するシロアリです。そのため、加害中の行動範囲は狭くても、餌場を変えるときは隣のお家へ移動する可能性もわずかながら考えられます。
例外:乾材シロアリは飛んで侵入する
近年、日本の一部地域に局所的に定着している外来種、アメリカカンザイシロアリについて補足します。
アメリカカンザイシロアリは北米の西海岸原産の乾材シロアリの一種で、輸入家具などから日本に侵入した厄介なシロアリです。その名前のとおり、乾燥した木材に巣を作るため、これまで解説したシロアリと異なる生態をしています。
アメリカカンザイシロアリの巣
簡単に言うと、このシロアリは羽アリが飛んで木材に穴を開け、その中に巣を作ります。住宅の柱、家具、下地材など、乾燥した木材でも構わず巣にしてしまうのです。そのため、乾材シロアリについては「飛んで入ってこない」と言うことができません。
しかし、アメリカカンザイシロアリは日本に定着しているとは言え、生息エリアが非常に限られます。ほとんどの皆さんには関係の無いシロアリですので、例外として「飛んで入ってくるシロアリも一部の地域にいるんだ」、と捉えていただければと思います。
床下をガッチリ守れば、シロアリは怖くない!
日本に生息するヤマトシロアリやイエシロアリは、土中から床下を経由して建物に侵入することがお分かりいただけたでしょうか。仮に羽アリが隣家から侵入しても、巣をつくる環境が室内にはありませんので基本的に問題はありません。(とはいえ、ご自身の家の中から羽アリが発生している場合は、間違いなく被害を受けていますので早急にシロアリ業者に相談を)
床下さえシロアリが入ってこないように対策しておけば、シロアリ被害は未然に防ぐことができます。仮に、隣家が取り壊しをしたとしても、古い家が隣にあったとしても、自宅さえしっかり守っていれば全然怖く無いのがシロアリの被害なのです。