ヤマトシロアリの危険性は?生態や羽アリの特徴・駆除方法【解説】|シロアリ1番!

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シロアリコラム

投稿日 2023.03.30 / 更新日 2024.10.30

シロアリ駆除シロアリについて

ヤマトシロアリの危険性は?生態や羽アリの特徴・駆除方法【解説】

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

シロアリと一言で言っても日本だけで20種を超えるシロアリが生息していることをご存知でしょうか。その中でも皆さんが最も出会う機会の多いシロアリがヤマトシロアリです

この記事では、ヤマトシロアリに焦点を当ててその危険性や生態、被害の実態や駆除方法を詳しく解説します。

ヤマトシロアリとは

日本で皆さんが「シロアリを見ました」、「被害に遭ってしまいました」といった場合、9割以上はヤマトシロアリ(学名:Reticulitermes speratus)によるものです。まさに日本を代表するシロアリと言えます。

被害箇所に生息するヤマトシロアリ

日本には、大きく分けると2つのタイプのシロアリが生息しています。一つは土壌生活種と呼ばれる地面の中での活動を主とするものと、もう一つは木材生活種と呼ばれる種類がいます。ヤマトシロアリはその中でも土壌生活種に入ります。

土壌生活種 ヤマトシロアリ
・イエシロアリ
など
木材生活種 ・アメリカカンザイシロアリ
・ダイコクシロアリ
など

 
湿潤な環境を好み、腐朽した朽木や庭などの枕木、植栽に添えられる木杭も良くヤマトシロアリの食害を受けているのを見かけます。ヤマトシロアリに限りませんが、シロアリの多くは枯死した木や倒木などの命尽きた木を餌とする種が大半のため、家屋へ侵入し柱や梁などの構造部材に多大な被害をもたらす重大な家屋害虫の一つとされています。

分布

ヤマトシロアリの分布範囲は非常に広く、日本に生息しているシロアリの中でも群を抜いています。その範囲は、北海道のごく一部の地域を除く日本全国におよび、ヤマトシロアリの生息していない地域を探すほうが難しいくらいです。

ヤマトシロアリの生息域

ヤマトシロアリの北限は北海道の北部に位置する名寄市(なよろ市)となっており、その先は猿払村や稚内などが残るのみで生息していないエリアはほとんどありません。

ヤマトシロアリの生態

シロアリには階級という面白い生態があります。階級というのは、シロアリのコロニー内における各個体に与えられる仕事のことです。

シロアリは不完全変態の昆虫で脱皮を行いながら成長しますが、生まれながらにして成虫と同じ形をし、同じように動くことができるためシロアリの世界では全ての個体に役割が与えられているのです。ヤマトシロアリには5つの階級が存在します。

女王・王階級 一つの巣には1ペアずつ存在し生殖活動に専念する
副生殖虫階級 女王や王が死亡するとその代わりとなって生殖活動を行う
ニンフ階級 新たな巣を作るために飛び立つ羽アリの一歩前段階、もう一回脱皮をすると羽アリへと変化する
兵蟻階級 巣内全体でも約3%ほどと数は少ないものの、巣の防衛が主な仕事
職蟻階級 巣内全体の90%以上を占め、餌の確保から巣の建築、卵や幼虫の世話までこなす

 

ヤマトシロアリの階級

ヤマトシロアリの女王は不死?

ヤマトシロアリではちょっと変わった生活環も知られています。それは、女王の寿命に関することです。通常、シロアリでは創設女王の代わりとなる副生殖虫というのは女王や王が何かのトラブルによってその後の生殖活動が行えなくなった際に機能します。しかしヤマトシロアリの世界では少々異なり、創設女王の寿命が短いということが分かっています。

早い段階で女王の分身である副生殖虫を大量に生むことは、短期間で巨大なコロニーへ発展することにつながるからです。女王単体では少量の卵しか確保できないところを数百もの副生殖虫が一斉に産卵することはとても理に適った戦略ですよね。いわば自身のクローンを作ってしまえば実質不死を手に入れたことと同じということです。

羽アリを飛ばす時期は5月

シロアリは繁殖のために羽アリを飛ばしますが、羽アリを飛ばす時期はシロアリの種類によって異なります。ヤマトシロアリが羽アリを発生させる時期は春先、毎年4月~5月にかけての僅かな時間しか出てきません。更に発生する時間帯まで決まっているというから驚きです。

羽アリが発生する時間帯は日中で、その中でも主に午前10時ごろからお昼前に発生することがほとんどで、9割以上にその傾向が見られます。

ヤマトシロアリの見分け方

シロアリの被害に遭ってしまった時にこれがなんのシロアリによるものか時にわかりにくい場合があります。日本における家屋害虫として知られる土中生活種のシロアリにはヤマトシロアリの他にもう一種同じ科に属しているイエシロアリというシロアリがおり、両種は形態的特徴も似ているところがあるので混同されやすいです。

ヤマトシロアリとイエシロアリの違い・見分け方

兵蟻で見分ける
ヤマトシロアリとイエシロアリを見分けるのに最も手っ取り早い方法は兵蟻の頭部形状を見ることです。ヤマトシロアリとイエシロアリは同じミゾガシラシロアリ科に属しているため職蟻での特徴の違いがほとんどなく、判別が肉眼ではほぼできません。そこで同定に用いられるのが巣の防衛にあたる兵蟻です。

兵蟻の違い

職蟻での形態的違いに乏しいシロアリですが、兵蟻になると一変し全く形状が異なるため、一瞬で判別することが可能となります。

ヤマトシロアリとイエシロアリでの違いは頭部形状と顎の形です。ヤマトシロアリでは頭部形状が長方形(円筒形)をしているのが特徴で、顎は太くがっしりしています。イエシロアリは頭部形状は卵型と言われるように丸みを帯びているのが特徴で顎の形状も細く弱い印象を持ちます。

羽アリで見分ける
もう一つ、ヤマトシロアリの判別法として覚えておいてほしいことが羽アリでの見分け方です。羽アリでは体色を見ることで種類を簡単に判別することができます。

羽アリの違い

ヤマトシロアリの羽アリは黒い体色に胸部に黄色の特徴的なラインが入ります。イエシロアリの羽アリは全身が茶褐色で他に特徴的な色は入りません。特徴を知っていればまず種類を間違えることはないでしょう。

また、羽アリの飛行時期でも判別することができます。ヤマトシロアリが羽アリを飛ばす時期は春先、だいたい4月下旬~5月の日中に行われ、イエシロアリでは6月から7月の夕方に結婚飛行が行われるため、この2種類の羽アリが一緒に出会うことは無いのです。

時期 時間帯
ヤマトシロアリ 4月下旬〜5月 午前〜昼
イエシロアリ 6月〜7月 夕方〜夜

 
そのため、いつ群飛が行われるかを把握しておくことで形態的特徴を見なくてもヤマトシロアリとイエシロアリを判別することができます。

ヤマトシロアリの被害と危険性

日本におけるシロアリ被害の約9割以上はヤマトシロアリによるものと言われています。それは、土があればほぼどこでも生活できてしまうため、私たちが最も身近で遭遇しやすいシロアリだからです。

そんなヤマトシロアリの被害の実態については国土交通省が2013年に行ったシロアリ被害実態調査にて詳しく記されています。まず日本全国におけるシロアリ被害の割合で言うと圧倒的にヤマトシロアリが優位に立っていることが分かります。日本のほぼ全国で被害を与えることからも、その危険性がお分かりいただけるのではないでしょうか。

シロアリ被害の割合

その割合は全シロアリ被害の92%にのぼっており、シロアリ被害と言えばヤマトシロアリと言っても良いほどです。イエシロアリは全体の約7.7%となり、その比率はヤマトシロアリと比較して極端に低下していることが分かります。乾材シロアリに至っては全体のわずか0.3%にすぎません。

もう一つ例を挙げておくと、弊社がシロアリ調査を行った2018年4月からの5年間でのデータを見てみると、その傾向がよく分かると思います。弊社は首都圏を中心に調査を行っていますので、東京周辺の傾向が分かります

シロアリ被害の割合

ヤマトシロアリ:99.49%、イエシロアリ:0.0%、アメリカカンザイシロアリ:0.51%(n=40,309)

やはり、圧倒的にヤマトシロアリの依頼が多いことが分かります。その理由は生息している範囲の違いが大きく、日本全国何処にでも生息しているヤマトシロアリと他のシロアリとでは被害に遭遇する率も大幅に変わってくるというわけです。イエシロアリは関東の南部沿岸に生息しますが、弊社のメインエリアである首都圏にはほとんど生息しておらず、0.0%以下と数える程度の依頼しかありません。

ヤマトシロアリの被害箇所

ヤマトシロアリは土中性シロアリであるため、食害を行うためには周辺に水分を含む環境が必要となります。そのため、水と結びつく場所での被害が多くなります。例を挙げると、床下や玄関、浴室、トイレ、キッチンといった場所です。

被害が多い箇所 床下、玄関、浴室、トイレ、キッチン

 
先程のシロアリ被害実態調査において調べられた結果でもその傾向が見られています。例えば床下での被害を見てみると過去6年以内に駆除が行われた物件の8割以上で床下への被害が確認されています。これは、土中性のシロアリであるヤマトシロアリが家屋へ入り込む際、地中を経由して侵入することが大きく関係しているためです。

シロアリの侵入経路

ヤマトシロアリが被害を出す際には地中から蟻道を伸ばすパターンがほとんどなので、被害が最初に発生するのは地面に一番近い場所が基本となります。そのため、最初に接点を持ちやすい床下が最も多い被害箇所となるのです。

玄関框のシロアリ被害

そして、その中でも水と関係性の多い場所が狙われやすくなります。例えば玄関などは、基礎で囲まれた閉鎖空間となっているため内部に含まれる水分が抜けにくく被害が非常に多いです。また、床から框までをタイル仕上げにする場合、木下地を地面に接触させて取り付けたり、框材にマツを心材とした集成材が用いられることが多く、特に蟻害を受けやすい箇所となります。

一方で、胴差しや小屋裏といった建物の中でも上階に位置する場所への被害はイエシロアリのような危険性は無く、ヤマトシロアリではほとんど見られません。ですが、これも「水分の供給がなければ」といった条件付きのことであるため、雨漏れや結露などで水が中に入ってしまっている場合は例外的に被害を受けることがあります。

床下〜1階 2階〜屋根裏
ヤマトシロアリ 危険性大 危険性小
イエシロアリ 危険性大 危険性大
アメリカカンザイシロアリ 危険性小 危険性大
(表)シロアリの種類ごとの危険性

ヤマトシロアリの被害痕の特徴

ヤマトシロアリの被害の特徴としてよく言われているのが被害箇所の食害痕に関することです。
ヤマトシロアリの食害は、食料の確保と同時に住処の確保も行われています。ヤマトシロアリでは食害箇所がそのまま住処としても利用されるため、食べた場所には土を運び込んでいることが多く見られます

ヤマトシロアリ ・被害部に土が詰まる
・被害箇所の見た目が汚い
イエシロアリ ・被害部に土がほとんど付かない

 
一方、同じ土中種であるイエシロアリでは球状の巣を構築しているため食害箇所そのものが居住部として使われることがほとんどなく、土が詰まっていることが少ないです。このことから、被害部に土が詰まっているなど見た目が汚い印象を受けるのがヤマトシロアリであると言われます。

●ヤマトシロアリの大きな被害事例は動画で解説しています

ヤマトシロアリの駆除方法

ヤマトシロアリの被害に遭ってしまった場合、どのようにして駆除をすれば良いのでしょうか。ヤマトシロアリでの駆除の本質は巣の根絶ではありません

侵入してしまったシロアリは薬剤による殺虫を行いますが、基本は防除の考えに則って作業が進められます。防除というのは、予防と駆除の両立を言い、殺虫だけに焦点を当てたものとは違ってその後の侵入防止措置までをしっかりと行います。駆除だけではシロアリの再侵入を防ぐことができません。そのため、しっかりと予防をすることが非常に大切なのです。

液剤による防除施工(バリア工法)

ヤマトシロアリでの対策で最も一般的なのがバリア工法です。薬剤は液状のタイプが主流ですが、他にも粒剤や防蟻樹脂コーティングなどで行われるケースもあります。

バリア工法

ヤマトシロアリは基本的に床下を経由して家屋へ侵入するため、いかに床下全面に対し薬剤処理を行えるかが重要となってきます。一般的には床下収納庫・床下点検口と呼ばれる入口から床下へ入り、土壌面から基礎立ち上がり、束柱や土台に至るまで全て処理をしていきます。被害のある箇所はドリルによる穿孔を行い木材内部への注入を実施することで内部に潜むシロアリを駆除します。

そして、ここで大切なことが未処理のエリアを作らないことです。「ここは処理できたけど、この奥は処理できません」といったことが発生するとヤマトシロアリは躊躇なく処理していない箇所から侵入してしまいます。

そのため、床下にもぐれない空間があるのであれば新たに点検口を作成したり、玄関や在来浴室など人の侵入が不可能な作りの場所は、室内側から専用ノズルで内部への薬剤注入を行うなど死角となる箇所ができないよう徹底した薬剤処理が行われます。

巣の根絶を目的としたベイト工法

この他、ヤマトシロアリの駆除にはしばしばベイト剤による対策も行われています。これは、先程の液剤施工とは異なり巣の根絶を狙ったものとなります。主に、床下に施工ができない物件や建物内部に薬剤を使用することに抵抗のある方に利用されることが多いです。

ベイト工法

施工方法は、まず建物外周にステーションと呼ばれる容器を埋め込みます。その中にベイト剤(毒餌)をセットして敷地に生息するシロアリに毒餌を巣まで運んでもらい、最終的に巣ごと駆除します。液剤処理に比べて効果が出るまでに時間はかかりますが、しっかりヒットさせることができればこちらも非常に効果的な対策です。

シロアリがヤマトシロアリだと感じたら

ヤマトシロアリについて被害の実態や駆除方法まで詳しく解説しました。最も身近で何処にでもいるシロアリですから、被害の報告が日本で最も多い種類です。シロアリ1番!でも最も施工件数の多いシロアリですので、被害について不安に感じた場合は、お早めにご相談ください。

また、ヤマトシロアリは毎年4月後半から5月にかけて羽アリシーズンを迎えます。もしご自身のお宅で羽アリが発生していたらシロアリ被害の可能性がありますので、専門業者に調査を依頼されることをおすすめします。

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