シロアリ駆除の薬剤・種類を解説【過去から現在まで】|シロアリ1番!

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シロアリコラム

投稿日 2019.02.27 / 更新日 2023.12.15

シロアリ駆除

シロアリ駆除の薬剤・種類を解説【過去から現在まで】

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WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

シロアリ駆除には薬剤を使用します。薬剤と聞くと、安全性や臭いなどのネガティブな部分がクローズアップされがちです。

シロアリ駆除薬剤の歴史を遡ると、環境問題などとともに歩んできた過去があります。最近では安全性の非常に高い薬剤が使用されており、超低臭性で臭いのほとんどない、施工者にも入居者にも害の無いものが当たり前となっていますが、実際の所それでも不安に感じてしまうかも知れません。今回はそんなシロアリ駆除を行う際の薬剤の歴史について遡っていくとともに、その安全性について、現在の薬剤のことを交えてみていきましょう。

シロアリ1番!が選ばれる理由

シロアリ薬剤の過去

「昔のシロアリ駆除は臭いがキツかった」昔のシロアリ駆除を経験されている方からこんなことを言われます。昔のシロアリ駆除の薬剤は確かに臭いのきつい薬剤を使用していました。

1950年代の薬剤は「有機塩素系」

今から遡ること70年以上前の1950年代。そのころは「クロルデン」に代表される有機塩素系薬剤の全盛期でした。有機塩素系薬剤の効果は絶大で、分解されにくく半永久的に効果があるためシロアリ駆除薬剤として重宝されてきました。しかしその反面、臭いがきつく施工中はお家から退避してもらうこともありました。そんな有機塩素系薬剤は、分解されにくい事による土壌汚染や蓄積性の高さから1986年に「第1種特定化学物質」に指定され、シロアリ駆除薬剤として使用されなくなりました。

「有機リン系薬剤」が取って代わった時代

クロルデンに代表される有機塩素系薬剤が禁止された後に登場したのが「ホキシム」「クロルピリホス」に代表される「有機リン系薬剤」です。有機リン系薬剤は、一般的に殺虫力が高く分解しやすいことから”農薬”としてはリスクの低いものでした。しかしシックハウス症候群が問題視されたことにより、2000年に(公社)日本しろあり対策協会が自主規制を開始しました。そしてそれを追うかのように2003年に建築基準法の改正によって有機リン系薬剤の使用が禁止されました。

シックハウス症候群とは

シックハウス症候群とは、化学物質による空気汚染等が原因で「吐き気」「頭痛」「喉の痛み」等の健康への悪影響が起こった状態のことを指します。現状では他にも様々な原因が考えられており、シックハウス症候群には解明されていない部分が多いのが現状です。

そこから、より安全志向の薬剤に

シックハウス症候群の原因となっていたのは、薬剤が揮発することによる室内の空気汚染が原因でした。そのため現在使われる業務用のシロアリ駆除用薬剤は、揮発成分のほぼ無い薬剤が使われており非常に安全性が高くなっています。
また、薬剤の安全性を裏付ける検証試験の充実やそのための仕組み作りなどにも力が入れられ、安全データシート、LD50、魚毒性、催奇性、土壌汚染、など様々な試験をパスする事が認定薬剤として使用されることの必須条件となっています。
 

主要な5つのシロアリ駆除薬剤

シロアリ駆除薬剤と一概にいっても様々な種類があり、全てをお話することは難しいです。そこで今回は5つの主要な薬剤についてご説明していきます。

ネオニコチノイド系薬剤

薬剤量が少なくて済み、残効性(効果の保持期間)が比較的長いため、現在もっとも普及しているのがこのネオニコチノイド系薬剤です。一般的に低臭性で臭いがほとんど無く、”イミダクロプリド”や”クロチアニジン”などが、ネオニコチノイド系薬剤に分類されます。

タバコに含まれるニコチンの殺虫成分を元に合成された薬剤で、昆虫に対して選択的に殺虫効果を発揮するため、人を始めとした哺乳類には安全性が非常に高い薬剤のひとつです。
また、ネオニコチノイド系薬剤は飽和蒸気圧が非常に低い薬剤のため、空気中への揮発がほとんどありません。シロアリ1番!の施工ではクロチアニジンをマイクロカプセル化した安全性が非常に高いものを使用しています。

代表的なネオニコチノイド系薬剤
タケロック、ハチクサン、ガントナー、オプティガード

合成ピレスロイド系薬剤

除虫菊から抽出される”ピレトリン”を化学合成したものがこのピレスロイド系薬剤です。
ピレスロイド系薬剤は即効性があるのが特徴です。”ビフェントリン”や”ペルメトリン”などが分類されます。低温のときに効果が大きくでるため、体温の低い昆虫に対して選択的に効果を発揮し人体に対しての作用は極めて弱いため、こちらも安全性の高い薬剤です。実は家庭用殺虫剤や、蚊取り線香の大半はこのピレスロイド系の薬剤が使われています。

代表的なピレスロイド系薬剤
アリピレス、天然ピレトリン、エコロフェン

フェニルピラゾール系薬剤

最近では市販の家庭用殺虫剤にも使用されることがある薬剤です。フィプロニルと呼ばれる薬剤が最も有名です。忌避性(シロアリが気付かない)がなく緩やかに作用するため高い伝播性(シロアリから他のシロアリに効果が伝わる性質)があります。また、他の薬剤に比べ有効成分の使用量が非常に少ないのが特徴です。弊社で使用するフェニルピラゾール系薬剤はマイクロカプセル化した安全性の高いものを使用しています。

代表的なフェニルピラゾール系薬剤
グレネード、アジェンダ、ターミドール、ネクサス

ホウ素系薬剤

「ホウ酸塩」で聞き馴染みがあると思います。ホウ酸は防腐剤として使用され、目薬の防腐剤として使用されているほどの安全性の高い薬剤です。ただし急性毒性はクロチアニジン(ネオニコチノイド系薬剤)より高く、必ずしも他の薬剤よりも安全という訳ではありません。また、防腐剤ですので、木材に対する防腐効果も期待できます。

しかし、水に対して溶脱するため、雨などで濡れてしまうと流れてしまう欠点があります。シロアリに対しては、他の薬剤と違い、食毒性(ホウ酸塩を食べることで効果が出る)のため、処理した表面を歩き回るだけでは効果はありません。特徴から、水分が溜まらない箇所への木材防腐剤としての使用が適しています。

IGR剤(脱皮阻害剤)

ベイト工法というシロアリ防除施工の際に使用される薬剤です。他の薬剤と異なり、脱皮を阻害するという変わった効果を持った薬剤です。シロアリは脱皮を繰り返して成長をする生き物で、脱皮ができなくなると成長することができずにやがて死に至ります。

通常、シロアリが好む基材にIGR剤を含有させ、それをシロアリが食べることで効果を発揮します。遅効性のためベイト剤を直接食べていない個体にも伝播していきます。それを利用し、巣内へ毒餌を持ち帰らせて巣の全滅を狙うというわけです。

IGR剤の強みは高い安全性です。脱皮を阻害するという効果は、逆に言えば脱皮をしない生き物には何の影響もないことを意味しており、私たち人間を含め哺乳類や鳥類、魚類などには非常に安全性が高い薬剤と言えます。

シロアリ1番!では「シロアリ1番!プレミアム」プランで、IGR剤を使用しています。

次世代の新薬剤

より安全・安心な薬剤の開発は現在も行われています。最近、次世代の新薬剤として注目を浴び始めているのがアントラニリックジアミド系薬剤やメタジアミド系薬剤です。興奮抑制性の神経伝達物質(GABA受容体)の阻害をする効果を持ち、発動すると興奮が収まらない状態(痙攣等の症状)となり、やがて死に至ります。忌避性がなく、残効性にも優れていることから遅効性能が非常に高く、大きな伝搬効果が望めます。

代表的な新規防蟻薬剤
アルトリセット、タケロックSC

これらの薬剤は安全性の観点から非常に期待が寄せられています。クロラントラニリプロールを有効成分としたシロアリ薬剤は、米国環境保護庁(EPA)において唯一「低リスク殺虫剤(RRP)」に指定されています。テネベナールも非常に高い殺虫効果が期待されている薬剤でありながら、人体への影響は最小限に抑えられています。

新薬開発の背景

こういった薬剤の開発が進んだ背景にはネオニコチノイド系薬剤に代わる有効成分の登場が望まれている事があります。というのも、ネオニコチノイド系薬剤は以前から「ミツバチなどの昆虫に対し良くない影響をもたらしているのでは?」という指摘の声があり、今後使用が制限される可能性も考えられます。

念の為補足しておくと、ここで言うネオニコチノイド系薬剤とは農薬として畑などで散布される薬剤のことで、シロアリ薬剤を指しているわけではありません。シロアリ薬剤はあくまでも床下で処理されるものであり、そこから薬剤が外部に流出したり、環境に悪影響を与えるリスクがないことは数々の厳格な試験で検証されていますのでご安心ください。

シロアリ駆除で健康が損なわれないために

現在のシロアリ駆除剤は蒸気圧が著しく低く、空気を汚す恐れはほとんどありません。また、床下に散布する施工方法となるため、室内への薬剤の飛散の心配もありません。ですから、普段私たちが室内で使用している「蚊取り線香」や「くん煙剤」、「殺虫スプレー」などの市販殺虫剤よりも体内に取り込む可能性は低いと捉えることもできるでしょう。更に、シックハウス症候群の影響があった薬剤も今では使用されなくなりました。

それでも、薬剤に不安に思われる場合もあるかと思います。実は、シロアリ駆除薬剤よりもアレルギーの原因となる可能性が高いものがあります。それは床下のカビ胞子やホコリなどのアレルゲンが空気中に舞ったことによる反応です。

湿気た土壌

シロアリ駆除をおこなう際は、床下の点検口から入りますので、入り口の養生が不適切だと、施工中や施工後に空気の流れでカビ胞子などが一時的に室内中に漂うことになります。シロアリ駆除薬剤の選び方も重要ですが、実際に施工を行うシロアリ駆除業者の養生対策などの品質についても詳しく調べてからお願いすることも大切です。

シロアリ1番!が選ばれる理由