シロアリの種類と見分け方解説|日本には20種類以上が生息|シロアリ1番!
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シロアリコラム
投稿日 2019.01.21 / 更新日 2023.08.31
シロアリ駆除
シロアリの種類と見分け方解説|日本には20種類以上が生息
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大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
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世界には様々なシロアリが生息しています。その数はなんと3000種。日本にも20種類を超えるシロアリが生息していると言われています。
大きな蟻塚に住む種類もいれば、木の中に住むシロアリもいます。一言にシロアリといっても、種類によって特徴は大きく変わるのです。では、日本にはどのようなシロアリがいるのでしょうか。この記事では種類ごとの特徴や見分け方を解説します。
目次
日本のシロアリの種類一覧
日本では20種類以上のシロアリが確認されています。
ミゾガシラシロアリ科 (Rhinotermitidae) |
ヤマトシロアリ属、イエシロアリ属 |
---|---|
レイビシロアリ科 (Kalotermitidae) |
コウシュンシロアリ属、ダイコクシロアリの仲間、アメリカカンザイシロアリの仲間、サツマシロアリの仲間 |
旧オオシロアリ科 (Archotermopsidae) |
オオシロアリ、ネバダオオシロアリ |
シロアリ科 (Termitidae) |
タイワンシロアリ、タカサゴシロアリ、ニトベシロアリ、ムシャシロアリ |
【日本の最普通種】ミゾガシラシロアリ科
日本で最も一般的なシロアリが属するのがこのミゾガシラシロアリ科です。住宅などの建築物を加害するものも多く、害虫としても重要なシロアリです。
ヤマトシロアリの行列
これらのシロアリは、一般的に地中を住処として蟻道(ぎどう)を伸ばしながら建物に侵入します。そのため「地下シロアリ」と呼ばれることがあります。日本ではヤマトシロアリ属とイエシロアリ属の2属が分布しています。
この2属は非常に似た形体をしており、働きアリで見分けるのは至難の業です。見分けるためには、同じ巣の中にいる兵隊アリ(兵蟻)を見ます。
このように、イエシロアリは丸みを帯びた卵形の頭部をしており、ヤマトシロアリは四角く長い形状をしているのが分かるかと思います。これら兵蟻の頭部の形状の違いは、多くのシロアリを見分ける上で非常に役立ちます。
ヤマトシロアリ属
- ヤマトシロアリ《建築物加害種》
- 北海道の名寄市を北限とし、本州、四国、九州などほぼ日本全国に生息するシロアリです。生息域は日本に分布するシロアリの中で最も広く、私たちが普段目にするシロアリの大半がこのヤマトシロアリといえます。
湿潤した木材を好み、朽木だけでなく庭の枕木や木杭なども食害します。また、住宅に度々侵入・営巣するため、家屋の柱や内装材などを加害するシロアリの代表種です。
- 他のヤマトシロアリ属《建築物加害種》
- ヤマトシロアリ属には上記のヤマトシロアリの他に多くの種類に分類されます。以前は亜種とされていたものも最近では別種とされています。
- カンモンシロアリ
- アマミシロアリ
- オキナワシロアリ
- ミヤタケシロアリ
- ヤエヤマシロアリ
- キアシシロアリ
関門海峡の周辺にだけ分布するシロアリです。羽アリの群飛が2月下旬から4月と早いためヤマトシロアリと区別することができます。
奄美大島と与論島で確認されています。
沖縄本島に生息するヤマトシロアリ属のシロアリ。
奄美大島や徳之島、沖縄本島で確認されています。
八重山諸島の西表島や石垣島で確認されています。
石垣島、西表島、与那国島で確認されている台湾原産のシロアリです。
イエシロアリ属
- イエシロアリ《建築物加害種》
- 日本に分布するシロアリで最も建物への加害が激しい種類です。イエシロアリは世界的にも加害が激しい種類とされており、人為的にアメリカ本土などにも分布が拡がっています。
ヤマトシロアリが寒冷地でも生息できるのに対し、イエシロアリは分布の北限が千葉県や神奈川県の沿岸部です。そのため東日本では一般的ではありません。生息の中心は神奈川県以西の沿岸部や四国、九州、南西諸島や伊豆諸島、小笠原諸島で、温暖な地域に限られます。
イエシロアリの王と副女王 - ゲストロイエシロアリ
- 日本では小笠原諸島の南鳥島に定着しているイエシロアリの一種。東南アジアが生息の中心で、日本本土に定着する恐れはありません。
レイビシロアリ科
レイビシロアリ科のシロアリは乾燥した木材に住み着く(加害する)種類が多く、乾材シロアリと呼ばれます。レイビシロアリの中でも建築物を加害することで有名なのは下記3種類で、近年本州でも問題となっている外来種アメリカカンザイシロアリも含まれます。
- ダイコクシロアリ
- アメリカカンザイシロアリ
- ニシインドカンザイシロアリ
Incisitermes属(アメリカカンザイシロアリの仲間)
- アメリカカンザイシロアリ《建築物加害種》
- アメリカカンザイシロアリはカリフォルニア州やワシントン州など、北米の西海岸に生息するシロアリです。レイビシロアリ科の中では比較的寒さに強く、日本では1975年に東京都江戸川区で発見されたて以降、その後多くの地域で侵入が確認されています。
現在、宮城県仙台市での発見が最北で、都道府県別に見ると、山形県、福島県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、富山県、福井県、三重県、和歌山県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、山口県、愛媛県、高知県、福岡県、熊本県、長崎県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県各地に局地的に分布しています。
家具などに入り込んだコロニーが世界各地に分散して定着しています。日本でも元々は輸入家具などから持ち込まれたと考えられています。
- シュワルツカンザイシロアリ
- アメリカカンザイシロアリに非常によく似ていますが、兵蟻の触角形状により区別が可能です。日本では南大東島での生息が確認されているのみで日本本土への定着は確認されていません。主に屋外の木材中に生息します。
- ハワイシロアリ
- こちらも生息域が非常に限られるシロアリで、小笠原諸島硫黄島に生息が確認されています。上記2種類に似ますが、こちらも兵蟻の触角形状により区別します。主に屋外の枯れ木に生息します。
Cryptotermes属(ダイコクシロアリの仲間)
- ダイコクシロアリ《建築物加害種》
- 日本に生息する乾材シロアリの代表です。熱帯性で1月の平均気温が10度を下回る地域では生息することができません。そのため生息域は限られ、奄美大島以南と小笠原諸島にのみ生息します。熱帯では木材の加害例が非常に多く、木製時計やピアノなどの乾燥した木材に入り込み世界各地に分布域を広げています。
- ニシインドカンザイシロアリ《建築物加害種》
- ニシインドカンザイシロアリは現在のジャマイカなどカリブ海諸国で最初に確認されたダイコクシロアリ属のシロアリです。ダイコクシロアリに似た形態をしており、同様に乾材でできた家具などへの被害が問題となっています。
ニシインドカンザイシロアリの兵蟻
ニシインドカンザイシロアリの擬職蟻とニンフ
東京都内での発見事例があり、輸入家具の移動で持ち込まれました。アメリカカンザイシロアリに比べるとまだまだ認知は低いですが、比較的温暖な地域では定着の可能性もあるため注意が必要です。
コウシュンシロアリ属
日本に生息するコウシュンシロアリ属は2019年に新種スギオシロアリが加わるまで、台湾・中国に生息するコウシュンシロアリと同種とされてきました。現在では、沖縄〜先島諸島のコウシュンシロアリ属はスギオシロアリとされています。
- スギオシロアリ
-
沖縄本島や八重山諸島に生息するシロアリです。家屋への加害はなく、枯れ木などに営巣します。
Glyptotermes属(サツマシロアリの仲間)
これらのシロアリは生息範囲が狭く、日本で見かけることはほとんどありません。また、人間の家屋への被害を引き起こさない種類がほとんどです。
- カタンシロアリ
- 静岡県を最北に、海岸沿いに分布するGlyptotermes属の中で最も北まで生息するシロアリです。家屋への被害はなく、照葉樹の生立木やその枯れ枝などを加害します。
- ナカジマシロアリ
- 福井県の蒼島を北限として、紀伊半島や四国、九州の太平洋沿岸に分布します。カタンシロアリと生態は似ており、照葉樹の枯れ枝などに生息します。
- サツマシロアリ
- 上記2種同様に家屋への被害はなく、照葉樹の枯れ木や倒木などに営巣します。四国、九州の太平洋沿岸に分布します。
Archotermopsidae科(旧オオシロアリ科)
オオシロアリの仲間は、湿った朽木に営巣するため湿材シロアリと呼ばれます。大型のシロアリで、日本には2種類が生息しています。建築物への加害はほぼありません。
- オオシロアリ
- 大隅諸島や奄美群島、大隅半島南端で確認されています。日本最大のシロアリで、働き蟻は10~15mm、兵蟻は大きいもので20mm近くになります。森林内の朽木に営巣するため、建物への加害はありません。
- ネバダオオシロアリ
北米原産のシロアリです。日本では兵庫県川西市の森林に定着が確認されています。建物への加害はありません。
シロアリ科
シロアリ科は高等シロアリとも呼ばれ、地球全体でみると70%のシロアリがこのシロアリ科に属します。同じシロアリ科でも住んでいる地域や生態は多様で、熱帯や亜熱帯ではリター(地面に堆積した葉や枝)の分解者として非常に重要な役割を果たしています。日本では沖縄本島や八重山諸島にのみ分布するシロアリで、建築物の加害はほとんどありません。
- タイワンシロアリ
- キノコシロアリとも呼ばれ、地中の巣内にシロアリタケというキノコを栽培します。職蟻の頭部が赤褐色をしているため他のシロアリと区別するとができます。
- タカサゴシロアリ
- 樹上に巣を作るシロアリです。テングのような角を持つ兵蟻が特徴的なテングシロアリ亜科の一種です。日本では西表島など八重山諸島にのみ分布します。
- ニトベシロアリ
- 兵蟻の大アゴが左右非対称で特徴的なシロアリです。土中に営巣します。日本では西表島などにのみ分布します。木材などは加害せず、土中の腐葉土をエサとします。
- ムシャシロアリ
- ニトベシロアリに似ており、土中に生息します。木材などは加害せず、土中の腐葉土をエサとします。
まとめ
日本の国土のほとんどが温帯に属するため、本州などでは比較的低温にも強いミゾガシラシロアリ科のヤマトシロアリやイエシロアリが住宅を加害して大きな問題となっています。しかしながら、実際には住宅の木材を加害するシロアリは日本では24種類中数種類しかいません。大半は枯れ木や土中の分解途中の植物を食べ物とし、炭素循環に大きく貢献する昆虫なのです。
人間にとっては害虫ですが、地球環境を保つためにはなくてはならない存在です。シロアリの地球全体での役割を理解した上で、シロアリと共存する道を歩む事が大切です。
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