ベイト工法の効果とは?シロアリ対策にオススメできる本当の理由|シロアリ1番!

COLUMN

シロアリコラム

投稿日 2018.06.12 / 更新日 2023.12.07

シロアリ駆除

ベイト工法の効果とは?シロアリ対策にオススメできる本当の理由

WRITER

田中勇史

WRITER

田中 勇史

(公社)日本しろあり対策協会 防除技術委員

田中勇史

大学では昆虫類の研究に携わる。2007年テオリアハウスクリニックに新卒入社。これまで3000件を超える家屋の床下を調査。皇居内の施設や帝釈天といった重要文化財の蟻害調査も実施。大学の海外調査にも協力。しろあり防除施工士。白蟻専科研究室長。
YouTube:シロアリ駆除Channel

ベイト工法はアメリカで開発され、日本に輸入された比較的新しいシロアリ対策です。日本ではバリア工法が主流でしたが、近年ではベイト工法でシロアリ対策を行う方も増えてきています。シロアリ1番!でも、「プレミアムプラン」でベイト工法による施工を提供しています。

「名前は聞いたことあるけど内容がよくわからない」
「普通のシロアリ駆除とどう違うの?」

皆さんの中には、ベイト工法について調べていらっしゃる方や、普通の工法との違いを調べている方もいるのではないでしょうか。この記事ではベイト工法について、効果やメリット、作業内容などについて解説します。

 

そもそもベイト工法って?

ベイト工法は、従来の床下への薬剤散布とはまったく発想が違います。具体的には、ベイト剤という毒エサを利用してシロアリ対策を行います。ゴキブリのホウ酸団子やアリの巣コロリを思い浮かべてみてください。これらのシロアリ版だと考えていただくと分かりやすいと思います。

ベイト工法の仕組み

まず、家の周りに“ステーション”と呼ばれる筒状のケースを一定の間隔で埋め込みます。その中にベイト剤(毒エサ)を設置します。ちなみに毒エサはシロアリが好むセルロース(木材の成分)の基材に薬剤を混ぜて作られています。このベイト剤を働きアリに巣へ持ち帰らせ、みんなで食べさせて巣ごと駆除しようというのがベイト工法の狙いです。

ベイト工法のメリット


ベイト工法が注目を集める理由は、従来の液剤施工にはないメリットがたくさんあるからです。例えば、

  • ニオイがしない
  • 家の中にホコリが舞わない
  • 必要な薬剤量が非常に少ない
  • 特殊な構造の建物も対応できる
  • 人体、ペットなどに対して安全
  • 確実に駆除ができる

 
などですね。1つ1つ確認してみましょう。

ニオイがしない
確かに従来の床下に散布するような液状の薬剤も、低臭性でニオイがほとんど気にならないように作られています。しかし実際は施工直後に「ちょっと変わったニオイがする・・・」と仰る方が稀にいらっしゃるのも事実です。原因として考えられるのは床下という特殊な環境です。

床下のシロアリ予防
床下に入って施工する液剤施工

液剤施工は床下を動き回りながら行います。そのため、どうしても土やカビなどの臭いが混ざり合って若干上がってしまうことは考えられます。特に雨の日は床下の土中水分が多くなり、ニオイを感じやすくなる傾向にあります。こういったニオイの問題が発生しないのがベイト工法の強みです。

ベイト工法の薬剤
ベイト工法の薬剤

ベイト工法に使用する薬剤は、ニオイがしない無臭の成分です。またベイト工法は床下に入らず家の外で実施しますので、家の中に薬剤のニオイが漂う心配は全くありません。施工中はもちろん、施工直後に家の中に変なニオイがするかもしれない・・・という心配はベイト工法の前では不要なのです。

実際シロアリ1番!でベイト工法での施工をしていただいたお客さまでも、施工後にニオイがするようになったというお話しをいただいたことはございません。

家の中にホコリが舞わない
ニオイと同様の理由で液剤施工に比べてリスクを軽減できるのが「ホコリ」です。

液剤によるシロアリ対策は床下とお部屋とを複数回行き来しながら行うものです。もちろんしっかりとした業者であればしっかりと養生を行った上で作業に取りかかるでしょう。しかし、それでもやはり床下のホコリを100パーセント防ぐのは非常に困難です。

ベイトステーションの設置

一方ベイト工法はそもそも施工時に床下に進入する必要がありませんので、施工方式そのものが室内の汚れ対策にもなっていると言えるでしょう。

必要な薬剤量が非常に少ない
先ほどベイト工法の毒エサはセルロースに薬剤を混ぜて作られているとお話ししました。もしかすると「毒エサって大丈夫なの?」と思うかも知れませんが、実際には使用している薬剤量は非常に少なくて済むことが知られています。液剤施工では、シロアリの侵入を防ぐには床下全面に一定量を散布する必要があります。

一方ベイト工法は固形の毒エサを等間隔で設置すれば十分効果を発揮することができ、使用する薬剤量は液剤の2000分の1程度と言われています。

つまり、ベイト工法は従来の液剤に比べて非常に少ない薬剤量で同等の効果を得ることができるのです。

特殊な構造の建物も対応できる
床下に入らずにシロアリ対策を行えることは、ニオイやホコリなどの安全面についてのメリット以外に「特殊構造に強い」という強みもあります。例えば、そもそも床下が存在しないお家では当然ですが床下に薬剤散布ができません。また、床下が非常に狭かったり配管が入り組んでいるようなお家も作業員が進入できないことから従来の方法での対策は難しいでしょう。

しかし、だからといってシロアリが侵入するリスクが無いわけではありません。建物のどこかで木材が使われている以上、シロアリは建物の小さな隙間から侵入を試みようとします。万が一の被害が発生しないように何かしらの対策をする必要があるわけですが、そんな時に役立つのがベイト工法です。

ベイト工法は建物の構造で施工できるかどうかが変わってしまうことはありません。たとえ床下への薬剤散布ができなかったとしても外周部からシロアリ対策を行い、建物を守ることができます。

ベイト工法は世界中の建築物に使われています
浅草寺、比叡山延暦寺、日本民家園、自由の女神、ホワイトハウス、シャンゼリゼ通り、故宮博物館など、一般の住宅以外にも様々な建築物のシロアリ対策に採用されている実績のある工法です。
人体、ペットなどに対して安全
もしかすると「家の外に薬剤を埋めても大丈夫なのかな?」と思われるかも知れません。ですが、ベイト工法の薬剤には非常に安全性が高いものが使われています。

ベイト工法で使用される薬剤はIGR剤と呼ばれており、昆虫の脱皮を阻害する働きがあります。脱皮ができなくなったシロアリは成長がストップし、やがて死んでしまうという仕組みになっています。逆にいえば、脱皮を行わない人間や犬、猫、鳥、魚などのペットに対して影響を及ぼすことはありません

地中に埋めたベイト剤

また、ベイト剤は専用の容器を地中に埋め込んで設置します。そのため、庭で遊んでいるお子さんやペットが誤って触ってしまう事や、食べてしまう危険も無いんですね。物理面・科学面の両側で安全が確保されている工法です。

確実に駆除ができる
ベイト工法についてよくいただくご質問の中に「本当に駆除できるのですか?」「容器と容器の隙間から建物に入ってくることはないの?」というものがあります。

確かにシロアリが容器の存在に気づかないことがあるかも知れません。ただ、ベイト工法によるシロアリ駆除は長期的な視点で計画されているため、どこかのタイミングでシロアリがベイト剤の存在に気づいてくれればそのまま巣の全滅を狙うことが可能です。

  • ベイト剤の大きさはどれが最適か
  • どんな成分を使えばいいのか
  • どの間隔で設置すればいいのか
  • メンテナンスの頻度はどれくらいか

ベイト工法はこれらをしっかりと考慮した上で仕様が作られています。また、実はこのアプローチは液剤施工に比べて強みになることもあります。

液剤施工は薬剤のバリアでシロアリの侵入を防ぎます。何らかの事情でバリアをうまく形成することができない場合、シロアリが侵入してくるリスクは高くなります。具体的には、築年数が非常に古い建物で腐朽が進んでいたり、床下で基礎断熱を採用しているような建物です。

ベイト工法であれば地面の下で活動するシロアリを巣ごと駆除しますので、シロアリの存在そのものにおびえる必要がなくなってしまうのです。

ベイト工法はこんなお家におすすめ

ここまでご紹介してきたメリットを踏まえると、ベイト工法でのシロアリ対策が特におすすめなのは、安全を重視する方、ニオイが気になる方、構造的に従来の工法が難しい方などです。

安全性やニオイを重視する方

ペットがいるご家庭に
薬剤は建物の外で専用のケースに入れて管理しますので、犬や猫などのペットが直接触れることがありません。飼育しているペットに不安をお持ちの場合はベイト工法をオススメしております。
妊婦さん、赤ちゃんがいるご家庭に
建物の中には薬剤を散布することはありませんので、妊婦さんでも赤ちゃんがいるご家庭でも安心です。
アレルギー体質や化学物質過敏症の方
洗剤や芳香剤、柔軟剤などを使うと気分が悪くなってしまう・・・といったような「化学物質過敏症」の疑いがある方がご家族にいらっしゃるような場合でもベイト工法ならオススメできます。
ニオイやホコリが気になる
最近の防蟻薬剤はニオイがほとんど無くなりましたが、それでもニオイが心配と思われる場合にはベイト工法がオススメです。ベイト工法は土中の専用容器で管理しますので、ニオイがする心配がありません。

住宅構造的に従来工法ができない方

床下が無い・床が低い物件
床下が低くて入れないお家でも施工できるのがベイト工法です。建物自体に薬剤を施工するのではなく、敷地に一定のスペースがあれば床下が無いお家でも施工できます。
基礎断熱を使っている物件
ベイト工法で特にオススメしたいのが基礎断熱の物件です。基礎断熱とは、基礎に断熱材が貼り付けられた工法です。実はその断熱材と基礎の間にシロアリが入り込みやすく、被害を受けやすい傾向があります。

基礎断熱のお家に一般的な液剤処理を実施しても、基礎と断熱材の間には薬剤が届きません。ですからシロアリ予防の効果がうまく得られないのです。ベイト工法ではシロアリを巣ごと駆除するため、被害のリスクを取り除くことができます。

ベイト工法の具体的な施工方法

ベイト工法の施工方法・手順をシロアリ1番!のベイト工法「プレミアム」を例にご紹介していきます。シロアリ1番!では、セントリコン・オールウェイズアクティブを使用したベイト工法を採用しています。

ベイト剤の設置間隔
ベイト剤の設置間隔イメージ

セントリコンオールウェイズアクティブは、筒状に形成されたエサ(セルロース)に薬剤を含有させたベイト剤を使用します。ベイトステーションの開け閉めが少なくて済むため、シロアリを刺激することなく管理可能な工法です。

1.外周にベイトステーションを埋設(土壌部)

専用のベイトステーションを建物外周に一定の間隔で設置します。ステーションの設置は、ベイト剤、ケース(ステーション)、掘削機などの道具を使用して行います。
2.ベイトステーションの埋設(コンクリート部)

外周の一部がコンクリートの場合、10cm程度をコア抜きしてコンクリートに穴を開け、ベイトステーションを埋設します。
3.ベイト剤の設置
ベイト剤の投入
ステーションの蓋を開け、内部にベイト剤を仕掛けます。
4.ベイト剤の管理

シロアリがベイト剤の食害を始めると、仲間のシロアリをフェロモンで呼び寄せ集団で食害を始めます。シロアリは薬剤に気づくことなく巣に持ち帰り、巣内のシロアリにベイト剤が分け与えられます。基本的に1年に1回の点検・管理を行い、シロアリをモニタリングします。

ベイト工法の注意点

メリットが非常に多いベイト工法ですが、いくつか注意点も存在しますのでご紹介させていただきます。

価格が割高

ベイト工法でのシロアリ対策は液剤施工に比べて費用が1.5倍から2倍ほどになるケースが多いです。というのも、液剤施工の場合は普通の業者であれば基本的に施工後5年間の保証が付与されます。

工法 施工費 5年トータル
ベイト工法 132,000円 312,000円
バリア(液剤)工法 125,000円 125,000円

1階床面積50㎡・建物外周長30mの場合

しかしベイト工法の場合、1年ごとの契約更新となっていることが多く、5年経過した段階でのトータルの費用は液剤施工を上回ることになりやすいのです。「とにかくシロアリ駆除の費用を抑えたい」という方には不向きな施工となりますので注意しましょう。

ベイト工法の価格についてより詳しい解説は
シロアリ駆除をベイト工法で!費用はどれくらいかかるの?

途中でやめてしまいがち

ベイト剤を設置してしばらくすると、シロアリがヒットして駆除をしている実感が湧くと思います。そして数ヶ月から1年もすると、駆除が完了してシロアリがいなくなるでしょう。しかし次にシロアリがヒットするまで、シロアリがいない期間が続くことがあるかもしれません。シロアリがヒットしないから”もう大丈夫!”と考えてしまう時期ですが、ここでベイト剤を撤去してしまうとベイト工法を最大限活かせないまま終わらせてしまうことになってしまいます。

ベイト工法の良さは、常に駆除する体制が整っていることです。シロアリ被害は地震災害と同じように、いつ発生するかを予知することはできません。ですから、常に駆除する体制が整っていること自体が最大の利点と言えます。

効果の発動までに時間がかかる

ベイト工法はシロアリの駆除までに、ベイト剤の設置→シロアリがベイト剤を発見→巣内への持ち込み→巣内での効果伝播、という4つの手順を踏む必要があります。

そのため、一般的な液剤施工と比較すると効果を発揮するまでに期間を置く必要があります。数ヶ月から半年程度で効果が現れることが多く、長期的な駆除として見ていただければと思います。

敷地が狭いと施工できない

建物の状態によっては施工自体が出来ないことがあります。例えば、敷地の幅が狭かったり(30~40cm以下)、敷地が全面タイルやコンクリートになっている、といった状況です。

特に狭小地では隣家との境界が狭くベイトステーションを設置できない場合があります。その場合はバリア工法など他の施工方法での対応が現実的です。

正しい手順や施工が必要不可欠

ベイト工法は定期的な点検が必要です。しかし、点検回数は多すぎても少なすぎても良いことは無く、半年から1年に1回程度が最適です。シロアリは非常に神経質な昆虫で、年に何度もフタを開け閉めしてしまうとシロアリが定着しなくなるリスクがあるのです。その点、弊社で使用するセントリコン・オールウェイズアクティブは年1回の開閉に抑えられるため、シロアリを過度に刺激させない工夫がされています。

また、タバコや他の薬剤がついたままの手でベイト剤を触るとシロアリが嫌がってベイト工法の効果が無くなります。しっかりとした知識が無い施工者が作業すると、このような初歩的なミスが起こりうる可能性がありますので、ベイト工法の業者選定の際は慎重に選ぶようにしましょう。

液剤散布工法との比較まとめ

最後におさらいとして、ベイト工法と液剤施工との違いを比較してみましょう。

比較 ベイト工法 バリア工法(液剤散布処理)
仕組み 毒エサでシロアリの巣を駆除 床下にバリアを作り侵入を防ぐ
建物に穴を開けるか 建物外周の一部コンクリート部 玄関内側の壁やタイル目地
薬剤 脱皮阻害剤(IGR剤) ネオニコチノイド系やピレスロイド系
におい 無臭 低臭
効果の持続 年1回の点検(契約更新) 施工後5年間は点検不要
即効性 施工から約1,2ヶ月後が多い 施工後すぐに効果を発揮
人や動物への影響 非常に安全 化学物質過敏症の方などは注意が必要
保証 契約期間(年1更新)のみ保証 5年保証が基本です

さいごに

ベイト工法は、人にもペットにも優しい安全なシロアリ対策です。ですから最近はとても注目されるシロアリ対策でもあります。

ベイト工法の良さは”安全性’や”根本的な駆除が可能なこと”ですが、継続させることで最大限の効果が発揮されることを十分に理解し、お家のシロアリ予防対策としてぜひ活用してみてください。

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